あなたはスキーブーツのカント調整ってしていますか?
私は幼少期からスキーを始めて、一時ブランクがあるものの現在はスキー場のパトロール隊として日常的にスキーを乗る生活をしているパトロール2年生のマツと申します。
そんな昔からスキーを楽しんできて、今は仕事にしてスキーをしている私が全く知らなかった、スキーブーツに備わっている標準機能のカント調整の驚くべき効果を話していきたいと思います。
ひとまずカント調整とはなんぞや?という話をして、次にカント調整でどんな変化が体験できるのか紹介したいと思います。
では本題に入りましょう。
スキーブーツのカント調整ってなにそれ?
スキーブーツはスキーをするために履くブーツという位置づけですよね?そんなブーツはハードブーツと言われる非常に硬いプラスチックで外側が覆われていて、ぐにゃぐにゃ曲がる長靴や一般的なブーツとは全然違うものですよね。
そんなめちゃくちゃ硬いスキーブーツの左右の傾きを調整するために、カント調整という機能が標準装備されています。
左右の傾きってなによ?って感じですよね。スキーブーツは硬いブーツであることから、脚の形が強制されてしまう仕様になっています。とはいっても人間の脚の形は人によってさまざまで、O脚やX脚なんて言われる脚の形もあるくらい人によって脚の形は違いがあります。
そんな脚の形が違うものを強制的にスキーブーツに収納すると、起こってくるのが脚のゆがみです。スキーブーツやスキーは基本的にセンター位置が決められていて、そのセンター位置に真っすぐに体重や力をかけて荷重することが必要とされています。
カント調整がされていないブーツはセンター位置からズレた位置に体重や荷重することによって、スキーの中心に正確に力を伝えることができずに、そのズレを滑っている本人が調整する必要が出てきます。
正直高速滑走中にスキーの調整のズレなどを調整するのは至難の業で、要らぬ癖がついたり、滑りが安定せずに上達の妨げになってしまいます。
身体の力を直接伝えるスキーブーツのセンター位置に調整する機能が、スキーブーツのカント機能です。
カント調整するときに重要になるのがスキーブーツの中心です。スキーブーツの中心は設計段階から決まっています。そのスキーブーツの中心に合わせるのが、膝頭の中心になります。スキーブーツの中心と膝頭の中心をカント調整で揃えてあげることで、スキーに無理なく正確な操作ができるようになります。
ではなんとなくカント調整の雰囲気を伝えたところで、カント調整をしっかり行った後の驚くべき変化を紹介します。
カント調整を正しく行うとどうなるか?
カント調整を正しく行った後の話の前に、おそらく大半の人がカント調整を行っていない人が多いと思うので、カントが正しく調整されていないとどういった状況になっているのか紹介します。
- 正しくスキーに乗れていてもスキー操作が勝手にズレる
- スキー操作がズレることで、身体で無駄な滑りの修正が必要になる
- 無駄な修正を行って滑り続けることで、要らない癖が滑りにつく
- 結果的にスキーの上達が遅くなる
スキーブーツの中心と身体の中心(膝頭の中心位置)がズレていると上のような状況になるので、結果的にスキーの上達が遅くなってしまいます。
スキーの上達の妨げになるスキーブーツの中心と、身体の中心のズレをスキーブーツのカント機能を使って調整すると、次のような効果があります。伝えたいことはここです!
- スキー操作に無駄なブレやズレがなくなり、スキーが非常に楽に乗れるようになる
- スキー板の中心をしっかり捉えて乗れるようになるので、滑走中の安定感が抜群に良くなる
- スキー板の中心に立てていることでスキーのエッジのかかりが良くなり、カービングのキレが増す
ここまでがカント調整を行って、スキー板・ブーツの中心と身体の中心を合わせてあげて体感した効果です。これだけではなく、逆に難しくなったこともあるので紹介しておきます。
- スキーの中心に乗れていることから、ズレは自分で生み出す必要がありズレの操作が難しくなる
私の中では良かった効果の中の弊害が、このスキー操作のズレの難しさです。カント調整をする前には、スキーは常にズレるものという印象がありました。カント調整を行ってからは、スキー操作のズレは自分から生み出すものに変化したことで、技術不足からズレが使いにくくなりました。
私が所属するスキー場のパトロール隊では、毎日大回転競技用のポールの設置とコースの試走が通常業務に組み込まれています。シーズン途中からスキーブーツのカント調整を行ったことで、先ほど話したスキーのズレの操作がうまくできずに、結果的に大回転競技用のコースの試走時に大転倒する事故に繋がってしまいました。
結果的には私自身の技術不足からの事故ということではあるんですが、正しくスキーに乗ることによる弊害?は、こういったことでも出てくるという一例として紹介しておきますね。
結果的には大転倒には繋がったものの、太ももにスキーが強打したことによる大きな青アザができたくらいで、捻挫や骨折などという大けがには繋がらなかったことが不幸中の幸いでした。
後半カント調整の結果起こった怖い話を紹介していますが、私自身はカント調整のおかげでスキーがさらに楽しくなったので、そこを声を大にして伝えたいです。
カント調整をしたらどう感じたのか?
改めてカント調整を行うと、滑った後どう感じたのかを紹介します。
- スキーに乗ることが楽にできるようになって、スキーに乗るのが面倒と感じなくなる
- スキー板の中心に立ってるので、高速滑走で怖いと感じない
- カービングターン時のエッジの食い込みが良くなるので、ターンの切れが良くなってスキーが楽しい
- 思った通りにスキーが操作できる感覚があるので、急斜面や不整地でも怖さを感じずスキーが楽しい
スキーが上手くないときによく感じることですが、スキーに乗るのが面倒だったり怖かったりと、スキーから離れたくなる感覚が結構あります。同じパトロール隊の隊員の中には、スキーに乗るのが面倒で、仕方なくスキーに乗っている人も実際にいます。
私の場合には元々スキーに日常的に乗りたくてパトロール隊に志願したタイプの人間です。カント調整をできたことで、さらにスキーが楽に楽しく乗れるものになったので、スキーを乗るのが楽しみで毎日過ごしています。
私は昔アキレス腱断裂を経験した人間なんですが、その傷跡が大きく張り出してしまっています。その結果毎年スキーをすると2~3日でその傷跡が靴擦れで大きく水膨れになり、結果的に生傷になった状態で、シーズン中を毎日傷口と接してスキーしています。
そんな傷口の痛みと共存しながらスキーしている身の私ですら、このカント調整を通して、今まで以上にスキーに乗るのが楽しみで仕方がないという状況になりました。
カント調整の方法はどうやるの?
スキーブーツのカント調整は、私の場合にはおさがりのテクニカのスキーブーツを使用していますが、このブーツを例に紹介します。基本的にカント調整はメーカーごとに違うので、あくまで参考にしてメーカーの調整方法で調整してください。
- スキーブーツ両側にあるカント固定用の留め具を六角を使用して緩めて開放する
- 留め具を解放した後は、カント調整用つまみを専用の工具を使用して、プラスもしくはマイナス方向にカント調整する(スキーブーツの中心と膝頭の中心が真っすぐになるように調整する)
- 調整が完了したら再度六角を使用して、カント固定用の留め具を締め付ける
以上が私が実際に行ったカントの調整方法です。人によっては全く調整が必要なくそのままで十分な方もいるかもしれません。またプラス方向やマイナス方向にカント調整することで、ブーツが左右に約1cm程度動くことが可能なので、それによってスキーブーツの中心と膝頭の中心が真っすぐになるように調整しましょう。
最後に
今回はスキーブーツのカント調整を行ったことで、私の中で劇的にスキー操作とスキーへの印象が格段に良くなったので、この記事を通してカント調整について紹介させていただきました。
おそらく大半の方がこのカント調整が行っておらずに、スキーとスキーブーツ、身体の中心がズレた状態でスキーをしていると思います。この記事を通して正しく道具を使えるようになってもらって、楽しくスキーができる方が増えたら幸いです。
少し長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。